ポストコロナの経済学 ー8つの構造変化のなかで日本人はどう生きるべきかー
2020年12月19日
こんにちは。
今回は、熊谷亮丸さん執筆の『ポストコロナの経済学』という本を紹介していこうと思います。本書では、ポストコロナの世界で想定される8つの構造変化について言及されており、ウィズコロナ・アフターコロナと呼ばれる世界で、日本経済はどのような事態に注意し、どのような方向に進むと良いのか、熊谷氏の意見を要約しています。
コロナが終息するまでの現金給付は正しいのか。GOTOキャンペーンは進めるべきなのかまた、コロナが終息した次の時代に訪れる変化にはどんなことがあるのか。
新しい時代を強く、賢く、順応して生きていくためにも、是非読んでいただきたい一冊です。
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目次
第1章 新型コロナショックにどう立ち向かうのか?
第2章 ポストコロナ時代の8つのグローバルな構造変化
第3章 日本の強みと弱みを検証する
第4章 ポストコロナ時代にわれわれはどう生きるか?
第1章 新型コロナショックにどう立ち向かうのか?
新型コロナウイルスの与える社会経済への悪影響は、リーマンショックと比較してもかなり深刻であるのが事実だ。リーマンショックの場合、「カネ」が止まったのだが、新型コロナウイルスの場合、「ヒト」「モノ」が止まったからだ。また時間軸で見ても、リーマンショックの場合、海外の金融機関が衝撃を受け、それが景気に反映し、じわじわとしわ寄せが遅れてきたが、新型コロナウイルスの場合、非常にスピードが速い。また、感染拡大防止に向けた政府の経済活動の自粛で家計部門が大きな打撃をうけ、その影響で企業部門も深刻なダメージを受けている。ここで第1章で筆者は、新型コロナショックに立ち向かうために、以下の3ステージに分けた政府対策の必要性を述べている。
第1ステージの政策では、感染拡大の防止に加えて、国民の生活保障に最大限注力する。具体的には現金給付だ。雇用を守り、中小企業を倒産させないため、雇用調整助成金の拡充や、本当に困っている中小企業の迅速な現金給付など、第1ステージでは、景気刺激策を打つのではなく、国民の不安除去に力を置くべきである。
第2ステージの政策は、消費喚起政策だ。この政策は、感染拡大に一定の歯止めがかかった状況で講じるのが望ましい。この段階では、商品やクーポンなどを発行して、観光やレジャーなど打撃を受けた産業を振興し、国内観光や地方創生を促すキャンペーンなどの展開だ。
第3のステージの政策では、今回の問題を奇貨として「攻め」の政策に取り組むことだ。具体的には、テレワークやオンライン診断、インターネット選挙の実現、など「ソサエティ5.0」を推進し、リモート社会を構築する。またサプライチェーンの再構築を進め、危機管理体制の強化やリスクの分散を図るべきである。
この3つのステージの政府対策を通して、政府が「国民の生命と暮らしを守る」というメッセージを発信する必要があることを主張している。本書では、第3ステージに焦点を当てた、ポストコロナの世界での社会の在り方、政府の対応の在り方が述べられている。
第2章 ポストコロナ時代の8つのグローバルな構造変化
ポストコロナ時代のグローバルな構造変化として、以下の8つが本書で述べられている。
①「グローバル資本主義」からSDGsを中心に据えた「ステークホルダー資本主義」への転換
②格差拡大を受けた、反グローバリズム・ナショナリズムの台頭のリスク
④グローバル・サプライチェーンの再構築
⑤不良債権問題が悪化し、潜在成長率が低下
⑥財政収支が軒並み悪化し、財政政策と金融政策が融合に向かう
⑦リモート社会が到来し、企業の「新陳代謝」が重要となる
⑧中央集権型から分散型ネットワークへの転換
詳しい内容は是非本書を手に取って読んでもらいたい。
第3章 日本の強みと弱みを検証する
第1に、日本最大の強みは「共存共栄」の思想、自然との共生、遵法意識の高さなどに裏付けられた、安定的な社会が存在することだ。そして、この「社会の安定」は「サステイナビリティ」の高さという面での、我が国の優位性につながっている。それが「格差」「治安の良さ」というデータで明らかになっている。格差においてはG7諸国の中で最低で、著しく差が小さい。また、「治安の良さ」に関しても、日本は世界9位だ。
第2に、日本人は勤勉、繊細である点も、大きな強みだ。勤勉で繊細な国民性を背景に、日本の「ものづくり」は高い技術レベルに支えられている。
しかし、弱みとしては、強烈なリーダシップを嫌い、嫉妬深い国民性であること・付和雷同で熱しやすく、冷めやすいこと・論理的な思考力が弱く、情緒的であること・スピード感に乏しいこと・多様性が欠如していること・などが挙げられる。
このような日本の強みと弱みの検証から考えられる今後我が国にとって最も重要なことは、諸外国の国民性を正確に理解したうえで「多様性」を受け入れて行動する寛容さだ。ポストコロナ時代に世界中で自国中心主義が蔓延する中で、異文化への寛容さを保ち続けることが大切である。
第4章 ポストコロナ時代にわれわれはどう生きるか?
第4章では以下8つの指針が述べられている。
指針①多様性や選択の自由を尊重しつつ有事の緊急事態法整備
指針③「SDGs大国宣言」を行い、国際社会での立ち位置を明確化
指針⑤財政政策と金融政策の融合が進むなか、財政規律を維持する
指針⑥分散型ネットワークを構築し、地方創生に舵を切る
指針⑦企業は自らの存在意義を問い、抜本的な経営変革
指針⑧個人はリベラルアーツや経済、金融を学ぶ
これらの指針について、本書では詳しく述べられている。ここで一つ一つ説明していくのも良いが、きっと表面的なものになってしまうので、是非、本書を手に取って課題解決のため、日本ができること、私たちができることへの理解を深めてもらいたい。確かに、これらの指針は政府や企業によって舵を切らないといけないようなものばかりだが、実際に方針の舵を切ることができるかは、日本国民一人一人なのだ。
指針①のダイバーシティや選択の自由の尊重のためには、価値観が多様化する現代において、単線的な思考ではなく、複線的な思考を持たなければならない。このような多様性や選択の自由を尊重するためには、まず、あなたが所属する企業や組織において、自分の意思をはっきりと持ち、その意思(価値観)を共有する勇気を持つことから始まるだろう。
また、指針④では、感染症を「制圧」するのではなく、「共存」するための政策をとり、「生命」と「経済」のバランスをとる必要性を説いている。このような社会を構築するためには、リモート社会の実現が必須だ。そんなリモート社会の実現で大きな課題となっているのが個人情報に関する問題だ。プライバシーを守りながら、命を守るためのビッグデータの活用が可能かどうかは、私たち個人の個人情報に対する意識の変化が必要不可欠である。
このように指針①、指針④でも、一個人の役割の大きさが読み取れるが、指針⑦と指針⑧では、企業、個人への課題提起が明確に述べられている。ポストコロナ時代に向け、私たち日本人が「誇れる点」そして「変革するべき点」を再認識し、政府や企業が実行に移すこと、そして一個人が他人事ではなく、直面している事実を理解し、順応していくことで、日本経済は再び「不死鳥」のように復活していくだろう。
謝辞:今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。このサイトでは要約や著者が心に残った部分を述べているので、より理解を深めてもらうためにも、是非、本書を手に取ってもらえたら幸いです。閲覧ありがとうございました。
参考文献:熊谷亮丸(2020年日経BP)『ポストコロナの経済学-8つの構造変化の中で日本人はどう生きるべきか?』