FACTFULNESS  ー10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣ー

 

12月28日

 

 今回は、ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランドによって著された『FACTFULNESS -10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣-』を要約、紹介していきたいと思います。

 

 皆さんは、世界人口のうち極度の貧困にある人口の割合は、過去20年で約半分になあり、世界の平均寿命は70歳を超えているという事実を知っていますか?

 また、5歳までになくなる子供の数は全体の44%から4%まで減少し、児童労働の数は28%から10%まで減少。さらに、核兵器の数は64千発から15千発まで減少しています。

 このように実際の世界は、どんどん良くなっているにもかかわらず、私たちはその事実を知りません。

 本書で様々なデータを基に、私たちが誤って認識している世界の現状を証明しています。著者も本書を通して、世界の現状と自身の認識の間には、大きな違いがあったのだと気づくことができました。このサイトを訪れてくださった皆様も、是非この衝撃に出会い、世界の真実を知っていただきたく思っています。

 

目次

第1章 分断本能       

第2章 ネガティブ本能    

第3章 直線本能       

第4章 恐怖本能第      

第5章 過大視本能      

第6章 パターン化本能

第7章 宿命本能

第8章 単純化本能

第9章 犯人捜し本能第      

第10章 焦り本能             

第11章 ファクトフルネスを実践しよう

 

第1章 分断本能

 筆者、ハンスは、人々が「世界は分断されているという大きな勘違いをしている」ということを嘆いている。ここでいう人々の「分断意識」とは先進国と途上国には大きな格差が存在しているという認識であり、先進国に住む「私たち」は、途上国の人々を「あの人たち」と分断して意識している。しかし、ハンスは、そもそも先進国と途上国で分けること自体が間違っていることを主張している。そこで本書では、世界を2つに分けるのではなく、所得レベルに応じて4つのグループに分けられている。そうすると、先進国は基本的に、レベル4にカテゴライズされるが、途上国はレベル123にカテゴライズされる。きっとこの時点で気づくだろう。発展国のカテゴライズ幅はとても広く実際には、レベル23、本書でいう、中間所得層の人々が全世界の75%もいるのだ。私たちが認識している「あの人たち」はもう「あの人たち」と分断するようなところにいないという事実が証明されている。そして同時に、このような誤認識をしないためのファクトフルネスが述べられている。

 

第2章 ネガティブ本能

 本書で問われている質問を紹介しよう。

次のうちあなたの考えに一番近い選択肢を選んでください。

A 世界はどんどん良くなっている

B 世界はどんどん悪くなっている

C 世界は良くなっても悪くなってもいない

 質問の回答の50%以上、トルコやベルギー、メキシコなどでは80%以上の人々が「B」世界はどんどん悪くなっていると答えた。だが正解は「A」世界はどんどん良くなっている。実際にデータを参照すると、世界人口のうち極度の貧困にある人口の割合は過去20年で約半分になあり、世界の平均寿命は70歳を超えている。また5歳までになくなる子供の数は全体の44%から4%まで減少した。一方、児童労働の数は28%から10%まで減少し、核兵器の数は64千発から15千発まで減少した。このように実際の世界はどんどん良くなっているにもかかわらず、私たちはその事実を知らない、というか信じない。このような思い込みの背景にあるネガティブ本能について第2章では述べられている。

 

第3章 直線本能

 第3章では「世界の人口はひたすら増え続ける」という思い込みに注目し、直線本能の存在を主張している。また質問をしよう。

15歳未満の子供は、現在世界に20憶人存在します。国連の予測によると2100年には、子供の人口は何人になるでしょう

A 40億人

B 30億人 

C 20億人

 回答はCの20億人だ。どうやらこの問題の一般人の正解率は26%だったらしい。ではなぜこのような誤差が真実と認識の間に生まれるのだろうか。その答えが直線本能である。これは目に見えない部分「線の続き」を直線で想像してしまうものだ。だが実際には世界人口は100億人から120億人ほどで落ち着くとされている。(詳しくは本書を読んでいただきたい)このように第3章では、人々の見えない部分への思い込みへの警告を鳴らしている。

 

第4章 恐怖本能

 2013年、東日本大震災が福島の原子力発電所を襲った。原発の近くに住んでいた人は避難したが、避難後1600人が亡くなった。原子力発電所の近くに住んでいたからという理由で、被爆したから亡くなったという誤認をしている人が多い。しかし、実際には亡くなった多くは高齢者で、避難の影響で体調が悪化したり、ストレスが積み重なったりで死亡した。事実原子力事故の被ばくで亡くなった人は一人もいない。つまり、命が奪われた原因は、被爆でなく、被爆を恐れての避難だったのだ。もちろん、放射線の被害が全くないという科学的根拠があるわけではない。放射能だけでない、子供向けのワクチンや感染症の予防接種など、事実に基づいた理解を広めるのは、とても難しい。悔しいことに、企業への規制不足のために悲惨な事故が起きてしまったトラウマは健在だ。

 このような背景から、筆者は、現実を見るということ、つまり、データや数を見て事実を基に判断する必要性を説いている。現在、年間30万人の人が「下痢」が原因で亡くなっている。だがマスメディアでは、未来の「巨大地震」や「テロ」最近では「同性愛」などを批判的に感傷的にばかり報道している。そして「下痢」が原因でこんなにも多くの人が亡くなっていることを報道しない。

 「恐怖」と「危険」は全く違う。恐ろしいことはリスクがあるように見えるだけだ。一方、危険なことには確実にリスクがある。未来の巨大地震、いつ襲われるかわからないテロ、さらなる少子化を招きかねない同性愛など、どれも「恐怖」にカテゴライズされる。このような「恐怖」を抱くことが悪いことではない。だが、恐怖本能が鈍らせることは忘れてはいけない。本当に危険なことを察知し、大切な人を守るためには、恐怖本能を抑えて、事実を見極めることだ。

 

第5章 過大視本能

 過大視本能には2種類の勘違いを生む。一つ目は、数字を見ただけで「なんて大きな数字なんだ」「なんて小さな数字なんだ」と勘違いしてしまうこと。そして2つ目は、一つの事例を重要視することだ。メディアは特に過大視本能に漬け込むのがうまい。様々な事件、事実、数字を実際よりも重要であるかのように伝えたがる。そのおかげで、「最低限の暮らしに必要なものが手に入る割合は何%か」という質問に対して多くの人が「世界人口の20%だけ」だという考えを持っている。正しい答えは80%だ。

 このような過大視本能を抑えるための方法は、やはり数字を比べることだ。身の回りにあるありふれた情報を鵜吞みにするのではなく、事実を捉え、比較する習慣を身に付けなければならない。

 

第6章 パターン化本能

 第6章では、「一つの例がすべてに当てはまる」という思い込みをする、パターン化本能の存在について述べている。ずいぶん前に述べた「世界は分断されている」という思い込みは「私たち」と「あの人たち」という勘違いを生む。だが、「私たち」が認識している「あの人たち」は今や大きな消費対象になっており、ビジネスチャンスがごろごろ潜んでいる。

 現在、世界の80%の人口がワクチンを受けることがっできる。これがどういうことかというと、十分なインフラが通っているということだ。ワクチンはずっと冷蔵されている必要がある。いわゆるコールドチェーンだ。基本的な交通インフラ、電力、教育、医療がすべてそろっていなければ。コールドチェーンは実現しない。このように想像以上に進んだ「今」が存在しているにも関わらず、人々の認識は20年、30年前のままだ。「途上国では、様々なものが不足し、多くの人が命を落としている」そのようなイメージではないだろうか? このような誤認は、人々のパターン化本能が関与している。この本能を抑えるためには、分類をすることが有効だ。自分と同じ集団と違う集団の相違点と共通点を見つけること、また、自分が決して基準ではないこと、例外が存在すること、強烈なインパクトに影響をうけやすいこと、を忘れないでほしい。

 

第7章 宿命本能

 宿命本能とは、もって生まれた宿命において、人や国や宗教や文化の行方は決まるという思い込みだ。この思い込みに従えば、第6章の間違った一般認識も、第1章の存在しない分断も「そういうことかあ」と正当化してしまうことになる。

 アフリカはこれからも貧しいままだし、それがアフリカの宿命なのだという意見をよく聞く。確かに、アフリカ大陸全体を見れば、他の大陸より遅れている。平均寿命も17歳低い65歳だ。だが、平均は誤解を生みやすいし、アフリカの中でも途方もない違いがある。例えば、チュニジアアルジェリア、エジプト、モロッコリビア、これらの五か国は、平均寿命を大きく上回っている。また、サハラ砂漠以南のアフリカ諸国は、この60年の間に植民地から独立国になった。その過程でヨーロッパ諸国が、かつて奇跡の発展を遂げたのと同じ着実なスピードで、アフリカの国々も教育、電力、水道、衛生設備を拡充してきた。しかも、サハラ以南の50か国はいずれも、スウェーデンよりも速いペースで乳幼児の死亡率を改善させた。これは驚くべき進歩だ。このようにアフリカは著しく発展してきているにもかかわらず、宗教や文化が、成長を妨げているという誤認をされている。宗教も文化も少しづつ、一歩づつ、順応するために変化しているのだ。

 人々が持つ宿命本能を抑えるためには、積極的に知識をアップデートすることが有効だ。いろいろなものが変わらない様に見えるのは、変化がゆっくりと起きているからで、わずかな変化でも、積み重ねればおおきな進化となる。教科書で見た「あの世界」と現在はずいぶんと違っている。さあ知識をアップデートしよう。

 

第8章 単純化本能

 シンプルなものの見方に私たちは惹かれる。賢い考えがぱっと開くと興奮するし、わかった!理解できた!と感じるとれしい。このことを「単純化本能」という。しかし、この本能はにはちょっとした問題がある。それは、その単純化本能で、すべての問題を対処しようとしてしまうことだ。ここで一つの事例を紹介しよう。

 筆者はこの本の中で、健康と富のバブルチャートを載せている。すると、そのバブルチャートの中で、キューバが特殊な位置にいることが分かった。所得はアメリカの4分の1なのに子供の生存率はアメリカと同じくらい高いのだ。この事実を知ったキューバ厚生大臣は、「キューバは貧乏人の中で一番健康だ」と誇り高く発言した。しかし、違う角度からこの事実を見ると、「キューバは健康な国の中で一番貧乏」ということがわかる。さあ、ここからだ。世界には、所得が高い国ほど健康だというデータがある。そして私たちは、所得が高いから健康だと認識する。しかし、実際はどうだろうか。アメリカは最も豊かな国でありながら豊かな国の中で一番不健康だ。つまり、不健康な人が多いのは、所得が低いから、健康な人が多いから所得が高い、という単純な要因回路にはならないのだ。要するに、一つの視点だけでは、世界を図れないし、理解できないのだ。

 

第9章 犯人捜し本能

 ここでいう犯人捜し本能とは「誰かを責めれば物事は解決する」という思い込みのことである。事実、これまでの様々な世界大戦や、現在の地球温暖化問題、これからの第4次産業革命による格差の拡大など、様々な問題の犯人捜しを、マスメディアでも書籍の中でも、私たちの中でも無意識に行っているのではないだろうか。だが前述したように解決策が単純でないように、犯人探しも限りなく困難で複雑だ。

(本書で様々な犯人捜しの事例が述べられているので是非読んでもらいたい)

そして、筆者は、これら犯人捜しの本能に対して責めることを止めるべきだと説いている。なぜなら、犯人を見つけたりたとたん、考えるのを止めてしまうからだ。ほとんどの場合、物事ははるかに複雑だ。だから、犯人よりもシステムに注目すべきである。世界を本当に理解し、変えたければ、現実の仕組みを理解することが必要だ。

 

第10章 焦り本能

 実は、著者自身にとって、この「焦り本能」を一番身近に感じた。焦り本能は、何かしらの「恐れ」を感じた際に発揮する。政府やマスメディアなどは、人々の関心を集めるこために、何か恐怖心をあおるような方法をとることが多い。(前述した貧困問題やテロ、巨大地震が下痢よりも大々的に取り上げられやすいように)

 事実、世界には、心配すべき5つのグローバルなリスクが存在する。①感染症の世界的な拡大 ②金融危機 ③第3次世界大戦 ④地球温暖化 ⑤極度の貧困だ。私たちは、何が一番深刻な問題かをわかっていれば安心できる。これら5つが今一番注力すべき問題だ。この問題に取り組むには、客観的で独立したデータが欠かせない。グローバルな協調とソースの提供も必要だ。小さな歩みを重ね、計測と評価を繰り返しながら進むしかない。「今すぐ決めなければならない」と焦り、過激で極端な行動をとるのではなく、問題の本質に注目し、どうしたら解決できるか考えよう。

 

第11章 ファクトフルネスを実践しよう

  著者は、本書を通して、人々がとんでもない誤認をしていることを指摘している。教育レベルの高い人も、世界中を飛び回っているビジネスマンも、また、ノーベル賞受賞者でさえ、事実に基づいて世界を見ることが出来ていないのだ。そして、その理由には、誰もが持っている「分断本能」「ネガティブ本能」「パターン化本能」「焦り本能」など10の本能にあった。そして、この10の本能を抑えなければ、事実に基づいて正しく世界を見ることが出来ないのだ。 

 また、事実に基づかない「真実」を鵜呑みにしないためには、情報だけでなく、自分自身を批判的に見る力が欠かせない。「この情報源を信頼して良いのか」と問う前に、「自分は自分を信頼していいのか」と問うべきなのだ。このセルフチェックに役立つのが、本書で紹介されている10の本能だ。

 とはいえ、自分自身を批判的に見ることを押し付けすぎてはいけない。必要なのは「自分が本能に支配されていた」と過ちを認められる空気をつくることだ。そのためにはお互いがお互いを許す心を持つことがとても大切であり、紹介した10の本能を抑え、事実に基づいて世界を見れば、世の中もそんなに悪くないと思えてくる。これからも世界を良くし続けるために私たちに何ができるかも、そこから見えていくだろう。

 

 

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 謝辞:今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。このサイトでは要約や著者が心に残った部分を述べているので、より理解を深めてもらうためにも、是非、本書を手に取ってもらえたら幸いです。閲覧ありがとうございました。

 

参考文献:ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド(2020年 日経BP社)『FACTFULNESS -10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣-』