第四次産業革命 ーダボス会議が予測する未来ー

 

2020年12月23日

 こんにちは。今回はクラウス・シュワブ氏によって著された『第四次産業革命ーダボス会議が予測する未来―』という本を紹介します。

 本書では、これからの第四次産業革命が及ぼす人類への恩恵と想定される危害について述べられています。第四次産業革命が進み技術革新の恩恵を受けることができる一方、この恩恵が平等に分配されるとは限らず、様々な面での格差という問題も発生しこれまで以上の貧富の格差の拡大が予想されている。このような正と負の一面を持った第四次産業革命の過渡期に生きる私たちにできることは何か、どうすればより良い未来が描けるのか、ダボス会議が予測する未来について前向きに述べられた一冊になっています。

 

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第四次産業革命

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目次

第1章 第四次産業革命とは何か

第2章 革命と推進力とメガトレンド

第3章 経済、ビジネス、国家と世界、社会、個人への影響

 

第1章 第四次産業革命とは何か

 まず、第四次産業とは、第1次、2次、3次産業に分類されない新しいタイプのもので「情報通信」「医療」「教育サービス」などのオートメーション化、データ化、デジタル化が挙げられる。第四次産業の特徴は、主に技術開発を中心とした産業であるため、物質やエネルギーの大量変化(消費)を伴わないという点だ。このような第四次産業が著しく発展し、大きな一つの産業と変革している状況を第四次産業革命という。

 第四次産業革命では、大きな利益がもたらされるが、それと同じくらい大きな問題が生じることが予測されている。特に懸念されるのが不平等の悪化である。なぜなら第四次産業革命での大きな受益者は、知的資本または物的資本の供給者であるイノベーターや株主となっており、労働に依存する人々と資本を有する人々の間に富の差が拡大しているのだ。このように、権力がごく少数の人に集中しないようにするには、協調的イノベーションをオープンなものにし、機会を広げることにより、デジタル・プラットホームの利点とリスクのバランスをとる必要性を述べている。

 

第2章 革命と推進力とメガトレンド

 第2章では、第四次産業革命の技術的な推進力も特徴として、物理的、デジタル、生物学的の三つに分分けて紹介されている。物理的なメガトレンドでは①自動運転車②3D プリンタ③先進ロボット工学④新素材だ。デジタルなメガトレンドはIOT、生物学的メガトレンドは遺伝子配列分析、合成生物学について述べられている。

 

第3章 経済、ビジネス、国家と世界、社会、個人への影響

  第3章で筆者は、第四次産業革命経済のルールは従来のものと異なると主張している。現在の構造的要因(過剰債務・高齢化社会)と体系的要因(プラットホームおよびオンデマンド経済の導入、限界費用の妥当性の増加)などの組み合わせは、これまでの経済学のシナリオとはかなり異なっている。

  また、変革期を迎えている第四次産業は、経済成長を推進し、私たち全員が直面している地球規模の大きな課題のいくつかを緩和させる可能性を秘めている。しかし、同時に私たちは第四次産業革命がもたらしえる悪影響、特に不平等、雇用、労働市場への悪影響を認識するだろう。そのような課題に真っ向からぶつからないために、現在の段階だからこそできる対処法を説明している。

 

 第四次産業革命は様々な変化をもたらすだろう。その範囲は、私たちの行いだけではなく、在り方にも影響を与えるだろう。プライバシーや所有の概念、キャリア形成、スキル開発などアイデンティティや関連する多くの側面に波及する。これまで技術は主に、物事を簡単に、早く、効率的な方法で行うことに寄与してきた。しかし、私たちは恩恵もリスクも多いことに気づき始めている。このような裏と表の顔を持つ第四次産業革命において、私たちの価値観の形成に大きな影響を与え、変化を受容する者と抵抗する者の二極化が進むと見込まれている。

 もちろん、第四次産業革命には様々なリスクが存在する。それは、第四次産業分野における素晴らしい開発が特定の利益のために利用されるということだ。このような事態が増えていくことで、前述したような不平等が生まれ格差が大きくなるだろう。そこで本書で紹介されているのが非営利のAI研究企業であるオープンAIである。この機関は、第四次産業革命がもたらす影響の一つである、新技術の融合を引き金とした、潜在力を秘めた者への力の付与の考えを具現化している。ちなみに、この組織の代表であるサム・アルトマンは『AIを進歩させる最善の方法は、個人に力を与え、人間を幸せにし、誰でも自由に利用可能にすることだ』と説いているらしい。

 第四次産業革命は様々な面で混乱をもたらすかもしれないが、その中で明らかにされる問題は私たちが生み出しているのものだ。つまり、これらの問題に取り組み、新たに出現する環境への適応に必要な変化や政策を実施し、繁栄できるかは私たち自身なのだ。素晴らしいことに、私たちは第四次産業革命の初期段階に生きている。そして、将来への道程に影響を与える力を持っている。

 

そんな私たちにできることは一体何だろうか

 

  それは、人間を中心に据えた社会を構想することだ。少数の利益のためのイノベーションではなく、すべての人の利益の構築を忘れてはいけない。さもなければ、第四次産業革命の負の面が浮き彫りになり、これまで私たちが重視していた、労働、コミュニティ、家族、アイデンティティを脅かしかねない。そうならないために、人々に人権を移譲し、すべての新技術は、人間が人間のために作り上げたツールであることを絶えづ自覚するべきである。すべてのイノベーションと技術の中心に人間性と公益性をもつことで、人々は共通の運命感に基づいた新たな集団的、道徳的意識へ到達することができるだろう。

 

 

謝辞:今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。このサイトでは要約や著者が心に残った部分を述べているので、より理解を深めてもらうためにも、是非、本書を手に取ってもらえたら幸いです。閲覧ありがとうございました。

 

参考文献:クラウス・シュワブ(2016年 日本経済新聞出版社)『第四次産業革命ーダボス会議が予測する未来ー』 

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